2014_05
01
(Thu)10:04

私に向けられる複雑な視線(再載)

Category: 日記
今回の話はまりあと阿部さんの話し合いの話です。
タイトルに再載とあるのは前に一度掲載した話だからです。
手を抜いた訳ではありませんのでご了承ください
それでは下からご覧ください


最近、阿部茄奈(あべかな)さんが私を見て難しい顔をする。
……生徒も人間だから、大人への好き嫌いもあるのも仕方がない。教師は生徒全員に好かれるのは無理なのだ。
ただ。阿部さんが私に向ける目は、そういった感情とは別のものだ。
一回だけでなく、授業中や、すれ違う時にも向けてくるので、気になって仕方がない。

このままではいけないと感じ、私は阿部さんを屋上に呼び出した。
「……話って、何ですか?」
阿部さんは想像通り、難しい表情をしていた。
「阿部さん、もしかして先生に何か言いたいことがあるんじゃないかなって思ったの」
阿部さんは口を軽く開いたが、すぐに口を締める。
……言いはしないが、私の勘は当たったようだ。
阿部さんはフェンスに寄りかかる。
私は彼女の隣に並んだ。
「授業がついていけないの?」
阿部さんは首を横に振る。
私が知る限り、阿部さんの成績は平均で彼女の言うことは嘘はない。
「じゃあ……他のことね?」
私が聞くと、阿部さんは首を縦に振り、ガーネットカラーの髪が揺れた。
私は彼女が言うのを待つ。青空に雲が流れ、静かな時が流れる。
阿部さんはフェンスを握りしめ、私の顔を見た。
「……生のことをどう思ってるんですか」
風に消され、阿部さんの声が上手く聞き取れなかった。
「ごめんなさい、もう一度言ってくれる?」
私は謝罪した。
阿部さんは落ち着きなく体を動かしつつ、言った。
「まりあ先生は、王先生のことどう思ってるんですか」
阿部さんは頬を赤く染めていた。
……成る程、阿部さんが私に向けてた表情の理由がようやく理解できた。
彼女は王先生のことを意識しており、王先生とよく絡む私をライバルとして見ているのだ。
王先生こと王正義(おうまさよし)先生は仕事仲間で、恋愛感情はない。
王先生はだらしなくて、見ていられずに、頻繁に注意をする対象だ。
阿部さんはそんな私を見て仲がいいと思ってるのだ。
「王先生は一緒に働く先生の仲間よ、阿部さんが思うような感情は持ってないわ」
私は丁寧に言った。
「……本当ですか?」
「本当よ」
阿部さんの表情は固かった。そんな簡単に割りきれないのだ。
恋愛は数式とは違って複雑なものだ。答えなど出ない。
「……私、まりあ先生が羨ましいです」
阿部さんは足を上下に動かした。
「綺麗で大人だし、私には叶わないですよ」
「……」
恋のライバルとして見られるのは、何とも言えない気分だった。
だが、黙ってもいられなかった。
「阿部さんは今のままでも十分素敵よ、行動力があって、頼りになるわ」
私は阿部さんの長所を上げた。
学園祭の時、阿部さんは祭りを盛り上げるために、校舎のあちこちを回ったり、自らが鬼ごっこを開催したりと、彼女の存在感は強かった。
阿部さん無くして学園祭は無かったと言ってもいい。
「おだてないで下さいよ……」
「おだててなんかないわ、本当のことよ」
阿部さんは苦笑いを浮かべた。
「今の私でも、王先生を振り向かせることをできますか?」
「できるわよ、きっと」
私は言った。
「けど、節度は守ること、いいわね?」
今の阿部さんを見ると、心配だから忠告をした。
阿部さん位の年齢の女子は、恋をするに至ってルールが必要である。
節度を守らなかったために手痛い目に遭う生徒を見ているから言える。
「分かってます。私、王先生を振り向かせてみせます」
阿部さんは力強く語る。
「応援してるわ」
私は笑いかけ、阿部さんもつられて笑った。
阿部さんの表情は晴れ、複雑さが失せていた。
扉が開いたのはそんな時だった。
「あー今日もいい天気だな」
何というタイミングか、アフロが印象的な王先生が現れた。
屋上の青空が恋しくなったのだろう。
私たちに気付き「おっ」と声を出した。
「珍しい組み合わせっすね~」
王先生が歩いてこちらに歩いてきた。
「ちょっとした話をしてました。もう終わったんで戻ります。くれぐれも午後の会議忘れないでくださいね」
私は王先生の顔を見た。
「それと、あなたを気にしている人がいるからちゃんと見てあげて下さい」
私は後ろを振り向き、阿部さんに片目を閉じる。
王先生と阿部さんを二人きりにしたいからだ。
私は王先生に背を向けて颯爽と屋上を去った。

私は阿部さんと王先生の関係が上手くいくことを願った。