2014_06
04
(Wed)21:22

真逆なセカイ~後日編・その2~

Category: 日記
この話の内容について詳しいことは「真逆なセカイ~前置き・登場人物紹介~」をご覧ください


青空が広がる中、明美は優と共に校舎裏にいた。
屋上から白い物体が物凄い早さで近づいてきて、地面にたどり着くなり、明美達の足元に来た。
「まさか阿部さんが王先生が好きだったなんてね~」
優は地面に来た白い物体……いや白いぬいぐるみを持ち上げる。
「……輝宮先生と阿部さんに悪いことをしたわ」
明美は耳元からイヤホンを外し、優に手渡した。
明美の心中は複雑であった。
優に呼び出されて、校舎裏に来るなり、イヤホンを付けさせられ、今まで屋上で起きたことを高性能盗聴器付きの白いぬいぐるみを通じて聞いていたのだ。
白いぬいぐるみは優の自作である。
優はコスプレ作りだけでなく、機械の組み立ても得意なのだ。
よって盗聴器入りぬいぐるみを作るのは容易い。
盗み聞きは明美にとって罪悪感を心に残すことだ。
尊敬する輝宮が相手なのだから尚更である。
「すっきりしたから良かったじゃないか、虚首さんには感謝しないとね~」
優は鼻歌混じりに言った。
優が言うのは明美のクラスメイトの虚首楼蘭(からさきろうさん)のことだ。
彼女は校内の情報に精通しており、屋上で二人が話すことも楼蘭から聞いたのだろう。
「でも悪いことをした気分だわ」
明美は暗い表情を浮かべる。
輝宮と入れ替わっていた時に先輩の阿部に難しい顔を見せられ気になって仕方がなかった。
「たまにはイケナイことも経験しないとね、いい大人になれないと思うよ」
優は人差し指を横に振る。
「貴方が言うと何かイヤらしく感じるわ」
明美は言いつつも、優の意見も一理あると思った。
人間良いことばかりでなく
時には失敗や間違いを犯す(ただし犯罪は駄目だが)のも成長に必要だろう。
明美が抱く後悔と罪悪感も大人になるための糧になるはずだ。
「そうかな~?」
優は盗聴器付きの白いウサギのぬいぐるみを頭に乗せる。
そしてウサギを動かすラジコンを操作した。
目が左右に、耳がくねくねと蛇のように動く。
「王先生は一緒に働く先生の仲間よ、阿部さんが思うような感情は持ってないわ」
優は輝宮の口真似をした。
輝宮が阿部に対して言っていたことだ。
話の内容は真剣だったが、優のおどけた様子が可笑しくて明美はつい口に手を当て笑ってしまった。
「そんなにおかしかったかな~?」
優に言われ、明美は笑うのをやめる。
「ごめんね、貴方の動きが面白かったから、つい」
明美は咳払いをして、真顔になった。
「とにかく、もう盗み聞きは駄目だからね、相手にも失礼だし」
明美はきっぱり言った。
人の会話を盗み聞きするのはマナー違反である。
「固いね~姉さんも、眠れないほど気になってたクセに」
「それは言わないでよ」
明美は頬を赤くした。
阿部のことが気になっていたのは確かである。
「さて帰ろうか、バレて粛清の鞭を食らいたくないしね~」
優は縫いぐるみを頭にのせたまま歩き出した。
優の言う"粛清"とは銀河のことを指す。
「銀河先生でしょ、そんな呼び方したらダメよ」
明美は注意した。
「王先生と阿部さん、上手くいくかな~?」
「さあ……それは分からないわ」
優の質問に明美はそう答えるのが精一杯だった。
二人の関係がどうなるかは当人達の問題である。
第三者の明美は答えられない。
「でも残念だね、青鬼はこれでフリーだよ」
「変なこと言わないの! それに……」
「青鬼じゃなくて輝宮先生でしょって言いたいんだよね、姉さんは言いたいことが分かりやすいよ」
優の意見に明美は反論できなかった。
言いたいことをそのまま優に持っていかれたからだ。
ただ、優の話でもう一つ注意しなければならない部分がある。
優の背中を見て歩きつつ、明美は口を開いた。
「優、女性の恋愛ごとはデリケートだから口出ししたらダメだからね」
明美は言った。
輝宮はまだ独身で、恋愛ごとより生徒を大事にしている。
そのためか恋愛ごとで王にからかわれることがある。
また輝宮だけでなく、阿部にも言える、無闇に恋愛ごとで冷やかしたり、干渉するのは良くない。
「一応心に留めておくよ、青鬼に結婚まだー? なんて言ってチョッピングライト食らいたくないし~」
優は振り向いてデリカシーに欠ける発言をした。
「優!」
「ははっ、冗談だよ~」
「待ちなさい! 冗談でも済まないことがあるんだから!」
早足で逃げる優を明美は手を上げて追いかけた。

すっきりした反面、悪いことをしたという思いを胸中に抱き、明美は走り続けたのであった……